この動画は、
2016年に行われた安部公房の初期詩集
『無名詩集』
の朗読会に関連して、
安部公房自身の生い立ちや文学観を
本人の肉声インタビューを交えながら
解説したものです。
安部公房の文学観:小説とは「実体」の提供
「生きている世界」を作る
文学作品とは、
人生の教訓や説教(意味)を語るものではなく、
一つの「生きている世界」を作り出し、
読者にその「実体」を体験させる
作業であると述べています。
無限の情報
優れた作品には、
航空写真のように見れば見るほど
「無限の情報」
が含まれていなければならず、
一言のメッセージで
要約できてしまうようなものは
書く必要がないと語っています。
満州での原体験とアイデンティティ
五族協和の理想と現実
1歳から16歳まで満州の奉天で育ち、
学校では
「五族協和(諸民族の平等)」
を教わりましたが、
現実の大人が
他民族を虐げる姿を見て
強い違和感を抱きました。
この時の疑惑が、
後の創作のバネになったと
振り返っています。
「喪失」の肯定
敗戦によって
「家(満州)」という場所を
物理的に失いましたが、
安部公房はそれを
「人間は所詮何かを失っていく方が幸せだ」
とポジティブに捉え、
特定の共同体に属さない
「都市的な人間」
としての感性を養いました。
一貫したテーマ:他者との関係
他者との通路
安部文学の核心には
「人間関係とは何か」
「他者とは何か」
という問いがあります。
「他者との通路の回復」
はあり得るのかというテーマが、
彼の全作品に一貫して流れています。
エピローグ:未来への遺産
『飛ぶ男』
68歳で急逝した際、
書斎には未完の小説『飛ぶ男』が入った
フロッピーディスクが残されていました。
最後まで時代を先取りする
メディア(ワープロ)を駆使し、
無限の想像力をかき立てる作品を
追求し続けました。
安部公房の作品は、
特定の教訓を与えるのではなく、
読者がその不条理な世界を
「体感」することを目的としており、
その根底には満州で培われた
「根無し草」としての
自由な視点があることが示されています。