概要
『バートルビー』(Bartleby, the Scrivener: A Story of Wall Street) は、
1853年に発表された短編小説で、
メルヴィルの代表作のひとつです。
ニューヨーク・ウォール街の法律事務所を舞台に、
謎めいた書記(スクライブ)、バートルビーをめぐる物語が展開されます。
あらすじ
主人公は法律事務所を経営する「私」(語り手)で、彼は新しく雇った書記のバートルビーが非常に真面目で几帳面な仕事ぶりを見せることに安心します。しかし、ある日、彼にコピーの照合を頼むと、バートルビーは「私はそうしない方がよいと思います(I would prefer not to.)」と拒絶します。
最初は穏やかに対処しようとする「私」ですが、バートルビーの拒絶は次第にエスカレートし、ついには一切の仕事を放棄。しかし、彼を解雇しても事務所から立ち去らず、困り果てた「私」は事務所を移転。最終的にバートルビーは新しい入居者によって告発され、牢獄に送られ、やがて衰弱して死んでしまいます。
テーマと解釈
『バートルビー』は、メルヴィルの作品の中でも最も解釈の幅が広い作品のひとつとされています。
1. 労働と従属の問題
– バートルビーの「I would prefer not to.(私はそうしない方がよい)」という拒絶は、資本主義社会における労働への静かな抵抗とも読める。
– 19世紀アメリカのオフィスワークの過酷さを象徴し、現代社会の労働問題にも通じる。
2. 実存主義的な視点
– サルトルやカフカの作品とも比較されることがあり、個人の自由と社会的規範の対立を描いている。
– バートルビーの姿勢は、実存主義的な「自由の否定」として解釈されることもある。
3. 人間の孤独とコミュニケーション不全
– バートルビーは他者と積極的に関わらず、最終的には拒絶し続けた結果、孤独死する。
– 彼を理解しようとする「私」も、結局はバートルビーの本質に触れることができず、無力感を抱く。
4. 社会の非人間性
– ウォール街の事務所という合理的で冷徹な空間の中で、バートルビーは異質な存在として浮かび上がる。
– 彼は社会から理解されず、排除される運命にある。
評価と影響
– 発表当初はあまり注目されなかったが、20世紀になって再評価され、現在ではアメリカ文学の重要な短編として広く読まれている。
– フランツ・カフカの『変身』やアルベール・カミュの『異邦人』と比較されることが多い。
– 「I would prefer not to.(私はそうしない方がよい)」というフレーズは、哲学や文学において象徴的な表現として引用されることが多い。
おすすめの翻訳
『バートルビー』は日本語訳も多数ありますが、以下の訳が特におすすめです。
1. 佐々木徹訳(光文社古典新訳文庫)
– 読みやすく、現代日本語に即した訳。
※ネット検索したが見つけられず
2. 小川高義訳(岩波文庫)
– 原文のニュアンスを忠実に再現した訳。
※ネット検索したが見つけられず
3. 八木敏雄訳(ちくま文庫『バートルビー/漂流船』)
– メルヴィル研究者による、作品の背景を詳しく解説した訳。
※ネット検索したが見つけられず
まとめ
『バートルビー』は、単なる短編小説ではなく、
社会・哲学・心理学的な側面を持つ深遠な作品です。
読者によってさまざまな解釈が可能であり、
そのたびに新しい意味が見えてくる名作です。
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